酔っ払って暴力を振るったら罪?責任能力についても詳しく解説

酒を飲んで酔っ払い、気持ちが大きくなって暴力を振るってしまった、というケースは非常に多いです。

こうした場合の、どんな罪に問われるのか、責任能力はあるといえるのかなどについて詳しく解説してまいります。

酔っ払って暴力を振るった場合の主な罪

酔っ払って暴力を振るった場合の罪としては

  • 暴行罪(刑法208条)
  • 傷害罪(刑法204条)

です。

暴行罪(刑法208条)

暴行罪は、人を「殴る」、「蹴る」、「叩く」、「押し倒す」、「投げ飛ばす」、「胸ぐらを掴む」など、人の身体に対する有形力を行使(暴行)し、かつ、人の身体に傷害(怪我)が生じなかった場合に問われる罪です。

暴行罪の罰則は「2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。

傷害罪(刑法204条)

傷害罪は、上記の暴行によって人の身体を傷害させた(怪我させた)場合に問われる罪です。

暴行がなかったならば傷害が発生しなかっただろうにという関係、つまり暴行と傷害との間に因果関係が存することが必要ですが、暴行を加える際に「怪我させてやろう」という意識がなくても傷害罪に問われることがあります。

傷害罪の罰則は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

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責任能力とは

ある犯罪が成立するためには、行為者の行為が犯罪の成立要件を満たすほかに、その行為時、その行為者に責任能力があった、といえることも必要です。

犯罪が成立した場合は、行為者に対して刑罰(死刑、懲役、禁錮、罰金など)が科されます。

もっとも、国家が刑罰を科すことができるのは、

  • やっていいことと悪いことをきちんと判別できる能力(是非判別能力)
  • 是非判別能力に従って、自己の行動をコントロールできる能力(行動制御能力)

の両方を合わせもつ人に対してだけです。

なぜなら、こうした能力を持たない人は、そもそも「〇〇してはいけません」という国家が作った法律のルール(規範)に従うことができないからです。

国家が作った法律のルールに従うことができないため、行為者を非難することができず、犯罪不成立=刑罰を科すことができないというわけです。

上記のとおり責任能力は是非弁別能力と行動制御能力の2つの能力から成り立っています

そして、是非弁別能力又は行動制御能力を完全に欠いている状態のことを「心神喪失」といい、心神喪失状態である者を心神喪失者といいます。

また、是非弁別能力又は行動制御能力を完全には欠く程度には達していないものの、通常人の水準よりも著しく低い状態のことを「心神耗弱」といい、心神耗弱状態である者を心神耗弱者といいます。

心神喪失者は14歳未満の者と同様に無責任能力者のため、刑罰を科されることはありません。

他方で、心神耗弱者は無責任能力者ではなく、限定責任能力者と呼ばれ、責任能力は認められるものの、必ず刑が減軽されます。

酔っ払いが暴力を振るった場合の責任能力の有無

では、酔っ払いが暴力を振るった場合に責任能力が「ある」と認められるのか、それとも「ない」、あるいは「減退している」と認められるのか見ていきましょう。

まず、酔っ払っている、といっても酔いの程度によって「単純酩酊」、「複雑酩酊」、「病的酩酊」の3種類に分けることができると考えられています。

単純酩酊普通に酔った状態のことです。アルコールの血中濃度によって、爽快期、ほろ酔い期、酩酊初期、酩酊期、泥酔期、昏睡期の6つの段階に区別されます。

複雑酩酊は異常酩酊の一種で、いわゆる「酒乱」、つまり、酒を飲むと人が変わったように粗暴になって、興奮してしまう状態のことです。

もっとも、時間の経過とともに興奮状態は落ち着いてきます。また、酔いがさめた後、行為時のことを本人に聞くと、断片的ですが記憶は残っています。

病的酩酊も異常酩酊の一種ですが酔い方の質が複雑酩酊と全く異なり、少量の飲酒でも発症します。

幻覚や妄想などに左右され、飲酒していないときには現れない攻撃性や暴力性が突然表面化し、周囲には理解できない不可解な言動を繰り返す状態です。

このうち単純酩酊と認められる場合は完全責任能力があるとされます。

他方で、複雑酩酊と認められる場合は心神耗弱、病的酩酊と認められる場合は心神喪失とされる傾向にあります。

このように、刑事事件では複雑酩酊あるいは病的酩酊と認められた場合に限って、はじめて心神耗弱あるいは心神喪失とされる傾向にあるのです。

酔っ払いの暴力事件でよくあるのが「(酔いがさめた時点で)事件当時(行為時)の記憶がない、あるいは一部しかないため、自分は心神喪失、あるいは心神耗弱だ」という主張です。

しかし、大切なことは、事件当時、酔っ払いの行為態様、言動などから、酔っ払いに是非弁別能力、行動制御能力が認められるか否かです。

酔っ払いの暴力事件では、実は、事件当時において是非弁別能力、行動制御能力(完全責任能力)が認められるものがほとんどです。

「酔っ払い=心神耗弱、心神喪失」と思って、上記のような主張を貫くと、反対に、「この人は暴力を振るうことを酒のせいにしている」、「全く反省していない」と思われ、捜査機関や裁判所の心証を悪くし、逆効果となるおそれがあります

また、複雑酩酊、病的酩酊についても、直ちに心神耗弱や心神喪失と結びつけることはできません。

たとえば、酒を飲んだら確実に複雑酩酊、病的酩酊に陥ることを認識しながら、敢えてそうした行為に及んだ場合には、たとえ行為時に心神耗弱、心神喪失の状態であったとしても完全責任能力を認められてしまうことがあります。

酔っ払いの暴力程度で後日逮捕される?逮捕されたらどうする?

「たかが酔っ払いの暴力」などと高を括っていると大間違いです。酔っ払いの暴力でも、後日逮捕されることは十分考えられます。

「酔っ払いだから多めに見てもらえる」と軽く考えない方がよいです。冒頭でご紹介したように、暴力は暴行罪や傷害罪に当たり得る列記とした犯罪行為です。

また、捜査機関は、あなたが事件当時に完全責任能力があったのではないか、という「疑い」だけであなたを逮捕することができるのです。

万が一逮捕されたら速やかに弁護士と接見し、どうすればよいかアドバイスを受けましょう。

罪を認める場合は、(国選・私選の)弁護士に被害者との示談交渉を依頼することになるでしょう。

他方で、まったく記憶のないことまで敢えて認める必要はありません。

もっとも、前述したように、まったく記憶がない場合でも完全責任能力が認められることは多いですから、どうすべきか弁護士とよく相談すべきでしょう。

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まとめ

酔っ払って暴力を振るった場合は暴行罪、傷害罪などの罪に問われます。

罪が成立するか否かは、酔いの程度(単純酩酊か複雑酩酊か病的酩酊か)により異なります。

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