傷害罪とは?逮捕後の流れ・示談交渉について解説

傷害事件を起こすと必ず逮捕されるのでしょうか。

結論を先にいえば、逃亡・証拠隠滅のおそれの有無や、被害者が負ったケガの程度などによって、逮捕されないケースもあります。

本コラムでは、主に以下の点について説明します。

  • 傷害罪の概要
  • 逮捕されるかどうか
  • 逮捕後の流れ
  • 示談の重要性

 

傷害罪とは

傷害罪とは、人を殴ったり押し倒したりして相手にケガを負わせたときに成立する犯罪です。ここでは、傷害罪の構成要件や罰則などを解説します。

 

傷害罪の構成要件

犯罪が成立するために必要な要素を構成要件といいます。

構成要件には次の4つがあり、犯罪が成立するためにはすべてがそろっていなければなりません。

  1. 実行行為
  2. 結果
  3. 因果関係
  4. 故意

実行行為

傷害罪の実行行為としては、人の顔を殴ることや相手を押し倒すことなど(有形力の行使)のほか、有形力を行使しなくとも、例えば、ラジオ、目覚まし時計を大音量で長期間鳴らしてストレスを与え、被害者をして慢性頭痛症、睡眠障害等にしたとして傷害罪の成立が認められた判例があります(最決平17・3・29刑集59・2・54)。

結果

傷害罪の構成要件としての結果とは、打撲や骨折など被害者が実際に負ったケガのことを指します。被害者がケガをしていなければ傷害罪は成立しません。

因果関係

因果関係とは、実行行為と結果の関係を示すもので、相手の顔を殴ったことにより鼻の骨を折るケガを負わせた場合は、因果関係があると認められます。

一方、相手の顔を殴ったがそのことではケガをせず、相手が帰り道に階段から転んで顔をケガした場合は、殴った行為と結果に因果関係があるとはいえません。

要するに、生じた傷害結果が、実行行為のもつ危険性が現実のものとなったと言えるかどうかという基準を用いて、実行行為のもつ危険が傷害として現実になったと言える場合には、因果関係が肯定されます。

故意

故意とは、相手に傷害を負わせる行為を行うことを認識しながらその行為に及ぶことを意味し、過失により人にケガを負わせた場合は傷害罪に該当しません(別途、過失傷害罪が成立し得ます。)。また、傷害罪については、仮に相手に有形力を行使するが、怪我をさせるつもりはなく(すなわち暴行の故意しかなく)とも、結果として、その行為によって相手方が怪我をしてしまった場合にも、故意が認められます(最判昭25・11・9刑集4・11・2239)。

 

傷害罪の罰則

傷害罪に関する規定は刑法204条にあり、法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

 

傷害罪の時効

犯罪行為が終わってから一定の期間が経過し犯人を処罰できなくなることを公訴時効といいます。公訴時効が成立するための期間は罪種によって異なり、傷害罪は10年です。

 

暴行罪との違い

傷害罪に似た罪に暴行罪があります。傷害罪と暴行罪の違いは構成要件の結果にあらわれます。

被害者がケガを負った場合が傷害罪、ケガを負わなかった場合が暴行罪に該当します。

実行行為が有形力の行使である点は基本的に共通で、暴行罪の法定刑は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料と傷害罪より軽くなっています。

 

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傷害事件で逮捕されないことはある?

傷害事件を起こしたからといって、必ず逮捕されるわけではありません。逮捕されるかどうかは何によって決まるのでしょうか。

 

逮捕される可能性が低いケース

日本国憲法33条は何人も現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ逮捕されないと定めており、逮捕状に基づく逮捕を原則としています。

 

逮捕状を発行できるのは裁判所のみで、裁判官は警察などから請求があった場合に被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるかどうかを判断します。

 

ただし、刑事訴訟法199条は相当な理由がある場合でも、明らかに逮捕の必要がないと認めるときはこの限りでないと定めており、刑事事件を起こしたからといって必ず逮捕されるわけではありません。

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では、どのような場合に逮捕の必要がないと認められるのでしょうか。

 

刑事訴訟規則では、逮捕の必要がないケースについて次のように記載しています。

被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重および態様その他諸般の事情に照らし、被疑者に逃亡・証拠隠滅のおそれがない場合

 

傷害事件においては、以下のようなケースは逮捕される可能性が低いでしょう。

 

  • 被害者が負ったケガの程度が軽微
  • 犯行態様が悪質とまではいえない
  • 犯行を認めている
  • 逃亡・証拠隠滅の可能性が低い

 

逮捕される可能性が高いケース

反対に、以下のようなケースは逮捕される可能性が高いといえます。

 

  • 被害者が負ったケガの程度が重大
  • 凶器を使用するなど犯行態様が悪質
  • 犯行を否認している
  • 逃亡・証拠隠滅の可能性が高い

 

傷害事件で逮捕された後の流れ

傷害事件で逮捕された後は、どのような流れで刑事手続きが進むのでしょうか。

 

警察などは被疑者を逮捕した場合、逮捕から48時間以内に被疑者を検察官に送致しなければなりません。48時間以内に送致の手続きをとらないときは被疑者を釈放する必要があります。

 

次に、被疑者を送致された検察官は被疑者を勾留する必要があるかどうか判断します。勾留の必要がある場合は、送致から24時間以内に裁判所に勾留の請求をしなければなりません。

 

裁判官が勾留を認めると、被疑者の身体拘束はその時点から10日続く可能性があります。また、裁判官がやむを得ないと認めるときは、さらに10日勾留を延長することが可能で、勾留は最長で20日に及ぶ可能性があります。

 

検察官はこの勾留期間中に被疑者を起訴するかどうか判断し、期間内に起訴しないときは被疑者を釈放しなければなりません。起訴された場合は、刑事裁判を受けることになります。

 

より詳細な流れについては以下の記事で解説いたします。

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傷害事件で示談を成立させた方がよい理由

被害者との間で示談を成立させることで、逮捕を免れたり不起訴になったりする可能性を高められます。

 

逮捕されない可能性が上がる

示談とは、被疑者と被害者とで話合いを行い、一定の合意事項を決めることです。

 

傷害事件における示談としては、被疑者が被害者に示談金を支払う一方、被害者に被害届や告訴状を提出しないことを約束してもらうといった内容が考えられます。

 

傷害罪は被害者による告訴がなければ検察が起訴できない親告罪ではないため、被害者が告訴状を提出していなくても逮捕される可能性はあります。ただ、被害届や告訴状の提出があるのとないのとでは、ない方が逮捕される可能性は低いといえます。

 

不起訴になる可能性が上がる

示談の成立によって不起訴になる可能性が上がるため、逮捕後でも示談成立は重要です。

 

示談の交渉次第では、一度提出した被害届や告訴状を取り下げてもらえる可能性があります。示談においては通常、示談書を作成しますが、被害届や告訴状の取り下げとあわせて、示談書に被疑者を許す意思を示してもらうことも可能です。

 

被害届や告訴状が取り下げられ、被害者が被疑者を許す意思を示していれば、検察官が被害者の処罰感情は和らいでいるとして、不起訴に傾きやすくなります。

 

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執行猶予が付く可能性が上がる

仮に起訴された場合でも、示談は成立させておいた方がよいでしょう。

 

起訴されれば刑事裁判を受けることになりますが、裁判官は判決に際して被害者の処罰感情を考慮します。

 

被害者が厳しい処罰感情を抱いている場合と、示談によって被告人を許す意思を示している場合とでは、後者の方が執行猶予は付きやすいといえます。

 

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傷害事件での示談交渉は弁護士に任せた方がよい理由

以下の理由から、交渉は弁護士に依頼することをおすすめします。

 

被害者が応じやすい

被疑者が被害者に示談交渉を申し入れたからといって、被害者が応じてくれるとは限りません。被害者が交渉に応じる義務はなく、被疑者に2度と会いたくない人もいます。

 

弁護士が被疑者と被害者の間に入ることで、交渉を開始できる場合もあります。被疑者に会うことはないとわかれば、被害者も交渉に応じやすくなります。

 

また、被疑者が示談交渉を申し入れようと思っても、相手の連絡先がわからないケースもあります。捜査機関が被疑者に直接、被害者の連絡先を教えることはありませんが、弁護士が示談交渉を行いたい旨を捜査機関に伝え、被害者の承諾が得られれば、捜査機関を通じて被害者の連絡先を知ることも可能です。

 

示談金が高騰するのを防げる

示談において重要な合意事項となる示談金の額については、一律の決まりはありません。交渉の中で、合意点を探っていくことになります。

 

被害者が納得しない限りは示談が成立しない以上、被害者の言い分に耳を傾けなければなりませんが、言われるがままだと金額が適切な水準を超えて高騰しかねません。

 

示談に精通した弁護士は、事件の内容などに応じて適切な水準の示談金を提示し、金額が不相応に高騰するのを防げます。

 

示談成立後のトラブルを回避できる

示談は口頭でも成立しますが、言った言わないのトラブルを避けるためにも、通常は示談書を作成します。

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示談書に決まった書式はなく、合意事項は正確に記載する必要があります。

 

内容にあいまいな部分があったり記載もれがあったりすると、後にトラブルに発展しかねません。弁護士が遺漏なく示談書を準備した方がよいでしょう。

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まとめ

傷害罪で有罪になると、15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

被害者が負ったケガの程度や犯行態様によっては、初犯といえども実刑が下る可能性は否定できません。刑事処分を軽くするには、被害者との間で示談を成立させることが重要で、示談交渉はさまざまなリスクを回避するためにも弁護士に任せた方がよいでしょう。

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