覚せい剤の罪の重さと弁護のポイント
ご存じのとおり、覚せい剤の使用や所持、輸入や輸出などは法律で禁止されています。
芸能人の逮捕なども相次いでいますが、覚せい剤の罪の重さはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、覚せい剤の罪の重さと弁護のポイントなどについて解説していきます。
覚せい剤の罪の重さ
覚せい剤取締法は、覚せい剤及び覚せい剤原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して必要な取締りを行うことを目的としており、それぞれ罰則が異なります。
①輸出・輸入・製造
覚せい剤を個人の使用目的で輸入や輸出・製造した場合、1年~20年の有期懲役になります。
営利目的で覚せい剤を輸入や輸出・製造した場合、無期もしくは3年~20年以上の懲役、または情状により無期もしくは3年~20年の懲役および1万円~1000万円の罰金となります。
②所持・譲渡・譲受・使用
覚せい剤を自分で使うために所持していた場合は、1月~10年の懲役になります。
譲受・譲渡・使用の場合も所持と同様に1月~10年の懲役です。
営利目的の場合には、1年~20年の有期懲役、または情状により1年~20年の有期懲役および1万円~500万円の罰金となります。
量刑の判断基準は、前科の有無(特に同種前科の有無・回数)、使用量(所持量)や依存度の高さ、再犯の可能性などから判断されます。
覚せい剤の使用行為等はなぜ処罰されるのか
覚せい剤を使っても、他人に迷惑をかけるわけではないからなぜ犯罪となるんだ?とお考えの方がいるかもしれません。
しかし、覚せい剤などの違法薬物は使用者の心身をむしばむだけではなく、違法薬物欲しさやその中毒症状による二次犯罪によって、他人の生命、身体、財産をも侵害する危険があります。
また、覚せい剤の売却代金は、暴力団などの重要な資金源にもなっています。
このような観点から、覚せい剤の使用行為等は処罰されます。
覚せい剤で逮捕されたらどうなる?
覚せい剤事件で逮捕された場合、隠している覚せい剤を捨てたり、売人と連絡を取り口裏合わせをするなど、証拠隠滅のおそれがあるとされ、逮捕後勾留されてしまうことがほとんどです。
さらに勾留延長された場合には、最大で23日間身柄の拘束が続く可能性があります。
また、覚せい剤事件には、ほかの事件とは違い被害者がいるわけではありません。
被害者と示談することで不起訴を目指すという弁護活動も難しいため、多くの場合は起訴され裁判となり、より軽い量刑を目指すことになるでしょう。
覚せい剤の使用・所持などの弁護のポイント
先述のとおり、覚せい剤事件での弁護のポイントは、より軽い量刑を目指すということです。具体的には以下のとおりです。
①専門の医療機関の受診や治療など
覚せい剤事件は、再犯率が高いことも知られています。自分では、もう二度と手を出さないと決意しても、覚せい剤依存から抜け出すことは非常に難しいと言われています。
まずは、自分の更生や身体のため、また今後の更生のための方法を具体的に検察官や裁判官に示すため、専門の医療機関などの受診や治療をおすすめします。
また、覚せい剤を使用できないよう、環境を変えることが重要なポイントとなることが多いです。
例えば、ダルクなどの入所施設に入って共同生活をしながら、離脱プログラムを受けたり、カウンセリングや自助グループ(依存症の人たちが自主的に集まり自らの体験などを語り合うグループ)に参加することなども推奨いたします。
②入手ルートを包み隠さず打ち明ける
入手ルートについては、包み隠さず打ち明けましょう。入手ルートを打ち明けることで、もう覚せい剤には未練がない、入手できなくなっても構わない、自分は更生するんだということを示すことができます。
また、入手ルートとなっている仲間や組織などとは決別することが重要です。
③家族などのサポート
再犯をしないための環境を作ることは簡単ではありません。依存症になってしまうと、自分ひとりで覚せい剤から抜け出すことは困難です。
家族などからサポートしてもらい、今後は覚せい剤に手を出さないよう監督していくという誓約書を検察官や裁判官に提出し、更生への決意・意欲・その環境を示します。
これらのポイントをアピールすることで、必要以上の重い刑にならないよう弁護活動を行います。また、身柄を拘束されている場合には、なるべく早期に釈放してもらえるよう検察官や裁判官に働きかけます。
まとめ
覚せい剤事件は、被害者がいないため示談をして不起訴処分を目指すということが難しい事件です。
依存症から脱却し、更生するためにも周囲のサポートが非常に重要になります。早い段階から弁護活動ができるよう、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
個別の事情については弁護士に相談してみるとよいでしょう。